Letter

アルツハイマー病:APP細胞内ドメイン-WAVE1経路はアミロイドβ産生を低減する

Nature Medicine 21, 9 doi: 10.1038/nm.3924

βアミロイド(Aβ)の産生増加はアルツハイマー病(AD)に結び付けられている重要な発症機序だが、アミロイド産生経路の恒常性制御機構と考えられるものについてはほとんど分かっていない。本論文ではアミロイド前駆体タンパク質(APP)の細胞内ドメイン(AICD)が、Aβ産生を制限する負のフィードバック機構の一部として働いて、WAVE1(Wiskott-Aldrich syndrome protein-family verprolin homologous protein 1, 別名WASF1)を減少させることを報告する。AICDは、Neuro 2a(N2a)細胞でWasf1のプロモーターに結合してその転写を負に調節し、Wasf1mRNA量とタンパク質発現を低下させた。WAVE1はAPPと結合し、ゴルジ体に共局在していた。N2a細胞内のWAVE1量を実験的に低下させると、APPを含む小胞の出芽が低下して細胞表面のAPP量が減少し、その結果Aβ産生が低下した。WAVE1の減少はまた、ADのマウスモデルで観察された。Wasf1遺伝子の発現を低下させると、Aβ量は急激に減少し、ADマウスモデルでの記憶障害が回復した。WASF1mRNA量の減少はヒトAD患者の脳でも見られ、このことはAβ産生の恒常性調節に関わる負のフィードバック回路の臨床への関連を示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度