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血圧調節:PCSK6を介するコリン活性化は正常血圧に必須である

Nature Medicine 21, 9 doi: 10.1038/nm.3920

高血圧症は最もよく見られる心血管疾患で、成人の30%以上が罹患している。ほとんどの患者で高血圧の原因は不明のままであり、このことはまだ見つかっていない要因の存在を示唆している。コリン(corin)はセリンプロテアーゼで、ナトリウム利尿性ペプチドを活性化し、それによって血圧を調節している。コリンはチモーゲンとして生合成され、タンパク質分解による切断を受けて活性化する。CORINのバリアントおよびコリン活性化を損なう変異が、高血圧症や妊娠高血圧腎症の患者で見つかっている。しかし現在に至るまで、コリンを活性化するプロテアーゼの実体は明らかになっていない。本論文では、プロタンパク質コンベルターゼのズブチリシン/ケキシン6型(PCSK6;別名PACE4)が、コリンを切断して活性化することを示す。培養細胞でのコリン活性化が、PCSKファミリープロテアーゼの阻害剤や、PCSK6の発現を停止させる低分子干渉RNAによって阻害されることが分かった。逆に、PCSK6を過剰発現させるとコリン活性化が亢進した。さらに、精製PCSK6は野生型コリンを切断するが、保存された活性化部位を持たないR801Aバリアントは切断されなかった。Pcsk6ノックアウトマウスは食塩感受性高血圧症を発症し、こうしたマウスではコリン活性化や心房性ナトリウム利尿ペプチドのプロセシング活性は見られなかった。また、高血圧症や妊娠高血圧腎症の患者に由来するCORINバリアントでは、PCSK6によるコリン活性化が起こらなかった。我々は、高血圧症患者の1人でコリン活性化活性が障害されるPCSK6変異を明らかにした。今回の結果は、PCSK6が長らく探し求められてきたコリン活性化因子であり、ナトリウム恒常性および正常血圧に重要であることを示している。

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