Editorial

ビッグデータと反応機構の出会い

Nature Medicine 21, 7 doi: 10.1038/nm.3903

炎症性疾患についての研究は急増中である。免疫恒常性を維持するには、宿主を守って感染から隔て、損傷部分の修復を促進するための免疫応答の範囲が正確に決められなくてはならない。応答の範囲がうまく調節されないと、慢性的な炎症が起こることになる。この特集は、こうした過程の持つ複雑性に取り組む新しい研究に注目している。慢性炎症には、環境因子、さまざまな免疫細胞小集団、さらに細胞のセンサーと細胞が作り出すメディエーターの相互作用などの多数の動的性質が関わっている。解明にはさまざまなレベルから得られる多様な情報が必要とされるが、多数のオミクス研究から得られるビッグデータによって、解明は加速するだろう。一方で、反応機構の詳細な研究は、炎症性疾患に関わる細胞の種類や役割を明確にしつつある。これらのデータと患者の遺伝的データ、縦断的プロテオミクスやメタボロミクス、免疫細胞の表現型解析、微生物相、臨床などのデータが統合されれば、免疫応答調節と遺伝学的性質の関連や、疾患関連因子についてさらに多くのことが分かってくると予想される。宿主と環境との相互作用が免疫系の形成、免疫応答、疾患感受性や治療応答性にどのように影響するかが調べられ、それに加えて疾患の不均一性について詳細な解明が行われれば、個人の治療応答性が予測できるようになり、精密医療が可能になるのだ。

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