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がん:大腸がん患者の血液中で見られるクローン進化とEGFR機能遮断に対する耐性

Nature Medicine 21, 7 doi: 10.1038/nm.3870

大腸がん(CRC)は、遺伝的多様化とクローン進化を繰り返しながら進化する。CRCの分子プロファイルは通常、外科手術で採取された検体や生検用検体で評価される。だが、CRC組織の遺伝子型決定には本来的に限界がある。それは、採取された組織標品はその時点での1つの状態を表しているだけであり、また腫瘍の不均質性のために空間的な選択バイアスがかかっているからである。また、組織標品検体を繰り返し採取することは困難であるし、こうした検体は疾患進行や治療応答性の動的監視には使用できない。我々は、循環血中腫瘍DNA(ctDNA)を使って大腸がんの遺伝型を判定し、上皮増殖因子受容体(EGFR)特異的抗体製剤であるセツキシマブもしくはパニツムマブ投与の間に起こるクローン進化を追跡した。EGFR機能遮断に対して初期耐性もしくは獲得耐性を示す患者のctDNAでは、複数の遺伝子(KRASNRASMETERBB2FLT3EGFRMAP2K1)で変異が見つかった。変異が生じたKRASクローンは、EGFR機能を遮断している間に血中に出現し、EGFR特異的抗体の投与を中止すると減少した。このことは、腫瘍細胞のクローン進化が、臨床的プログレッションを越えて継続していることを示す。セツキシマブ耐性を獲得したCRC細胞のゲノム薬理学的解析から、抗体投与を中止するとKRASクローンは減少するが、腫瘍細胞集団の抗体製剤に対する感受性は回復することが分かった。抗EGFR抗体の複数回投与が有効であった患者のctDNAプロファイルには、KRAS変異体レベルのパルス状の変化が見られた。これらの結果は、CRCゲノムが間欠的な投薬スケジュールに動的に適応することを示しており、EFGRの機能遮断を行う再投与療法の有効性を分子レベルで説明するものである。

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