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動脈硬化:平滑筋細胞のKLF4に依存する表現型変化はアテローム斑形成の病因に重要な役割を持つ

Nature Medicine 21, 6 doi: 10.1038/nm.3866

アテローム性動脈硬化症の病因における平滑筋細胞(SMC)とマクロファージの役割を調べたこれまでの研究では、これら2つの細胞タイプを確認するのに使われた方法の信頼性が低かったために、異論が多い結果となっている。我々は、Myh11-CreERT2 ROSA floxed STOP eYFP Apoe−/−マウスを用いてSMC系譜を追跡し、SMCマーカーの免疫染色に基づく従来のSMC検出法では、進行したアテローム性動脈硬化病変内のSMC由来細胞の80%以上を検出できないことを見いだした。見落とされていたこのようなSMC由来細胞は、マクロファージや間充織幹細胞(MSC)などの他の細胞系譜の表現型を示す。Krüppel-like factor 4(Klf4)をSMC特異的に条件的ノックアウトすると、野生型対照群と比較した場合に、SMCに由来するMSC様細胞やマクロファージ様細胞の数の減少、病変サイズの著しい縮小、繊維性被膜の肥厚などのプラーク安定性に関する複数の指標の上昇が起こった。KLF4のin vivo ChIP-seq(chromatin immunoprecipitation-sequencing)解析と、コレステロール処理した培養SMCでの研究に基づいて、KLF4の標的遺伝子が800個以上見つかり、その中にはSMCの炎症誘発性応答を調節するものが多数含まれていた。今回得られた知見は、アテローム斑へのSMCの関わりが大幅に過小評価されてきたことと、KLF4に依存するSMC表現型の変化が病変の発生に非常に重要であることを示している。

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