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糖尿病:レスベラトロールはラットで十二指腸のSirt1を活性化し、神経回路網を介してインスリン抵抗性を解消する

Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3821

レスベラトロールは肥満や糖尿病のラットモデルでインスリン感受性を改善し、肝臓でのグルコース産生(HGP)を低下させるが、このような抗糖尿病作用の基礎となる機構は解明されていない。レスベラトロールの作用の重要な特徴と考えられている過程は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)依存性デアセチラーゼであるサーチュイン1(SIRT1)の活性化で、これはさまざまな組織で見られる。しかし、レスベラトロールの生物学的利用能の低さから、経口投与したレスベラトロールの抗糖尿病作用が直接これらの組織で効果を現すのかどうかは疑問視されている。今回我々は、レスベラトロールの十二指腸内急性注入が、3日間にわたる高脂肪食(HFD)投与によって誘発した十二指腸粘膜でのSirt1タンパク質レベルの低下を回復させる一方で、インスリン感受性を増強し、HGPを低下させたことを示す。さらに、Sirt1の発現を十二指腸特異的に14日間にわたってノックダウンするだけで、通常の食餌を与えたラットで肝臓のインスリン抵抗性を誘導できることが分かった。また、十二指腸で作用するレスベラトロールがグルコース代謝を調節するには、十二指腸でのSirt1およびAMP活性化プロテインキナーゼ(Ampk)の活性化が必要であり、これによって腸–脳–肝の神経軸が機能するようになり、視床下部のインスリン感受性が改善され、次いでHGPが低下することも分かった。インスリン抵抗性の急性モデル(3日間にわたるHFD投与)で見られたレスベラトロールの十二指腸での作用に加えて、レスベラトロールの十二指腸への短期注入は、インスリン抵抗性の他の2種類のラットモデル(28日間にわたるHFD投与による肥満モデルとニコチンアミド–ストレプトゾトシン–HFDによって誘発した軽度2型糖尿病モデル)でHGPを低下させることも分かった。まとめるとこれらの研究は、十二指腸のSIRT1を標的として肥満や糖尿病でのインスリン抵抗性を解消しグルコース恒常性を改善することが治療法として妥当であることをはっきり示している。

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