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てんかん:脳でのMTOR体細胞変異は限局性皮質異形成II型を引き起こし、難治性てんかんにつながる

Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3824

限局性皮質異形成II型(FCDII)は散発性の大脳皮質発生異常で、異常な形態のニューロン、層構造形成異常(dyslamination)および医学的に難治性のてんかんを特徴とする。従来から、FCDは病変領域の体細胞変異によって引き起こされると考えられてきた。本論文では、FCDII患者4人の脳・血液DNA試料対で、全エキソームの大規模塩基配列解読(リード深度は412−668×)を行い、さらに部位特異的アンプリコン塩基配列解読(100−347,499×)により確認することで、2人の患者の脳でMTOR(mechanistic target of rapamycin)のde novo体細胞変異c.7280T > C(p.Leu2427Pro)を明らかにした。さらにFCDIIの患者73人でハイブリッドキャプチャー法およびPCRアンプリコン塩基配列解読法を使いMTOR遺伝子の詳細な塩基配列解読を行い、10人の患者の複数の脳組織試料で8個の異なる体細胞ミスセンス変異を明らかにした。今回突き止められた変異は、研究対象となった全FCDII患者の15.6%(77人中12人)に見られた。これらの変異はmTORキナーゼの過剰活性化を引き起こした。マウスでin utero電気穿孔法により変異型MTORを皮質に局所的に発現させると、それだけでニューロンの移動が破壊され、自発性発作と巨細胞性ニューロン(cytomegalic neuron)が生じた。ラパマイシンによるmTOR阻害は、巨細胞性ニューロンの形成とてんかん発作を抑制した。この研究は、脳でMTORを活性化する体細胞変異がFCDを引き起こすことの証拠を、我々が知る限りで初めて示したもので、mTORがFCDでの難治性てんかんの治療標的であることを明らかにしている。

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