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代謝:クローン化したヒト成体褐色脂肪細胞の遺伝学的および機能的特性解析

Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3819

褐色脂肪組織(BAT)は、哺乳動物で低体温症に対する自然防御システムとして働く。また、褐色脂肪はその活性化によってエネルギー消費が増加することから、肥満の発症を防ぐと考えられている。ヒト成体にもBATが存在することは広く認められているが、さまざまな脂肪組織内に非常に多様な種類の細胞が含まれることが主な理由となって、ヒト成人BATの起源となる細胞や分子的特性はほとんど分かっていない。成人の褐色脂肪細胞の性質を単一細胞レベルで理解するために、本研究では2人の成人被験者の BATから得られた間質血管画分からヒト褐色脂肪細胞をクローン化し、その分子的特性を網羅的に解析した。RNA塩基配列解読の後、不偏全ゲノム遺伝子発現解析を行い、脱共役タンパク質1(UCP1)陽性のヒト脂肪細胞集団は、誘導可能なタイプの熱産生脂肪細胞(すなわちベージュ脂肪細胞) と類似した分子的特徴を示すことが分かった。また、我々はUCP1陽性ヒト脂肪細胞で高発現する分子マーカー群を突き止め 、そこにKCNK3(potassium channel K3)とMTUS1(mitochondrial tumor suppressor 1)が含まれることを明らかにした。さらに、これら2つのマーカーの機能特性を機能喪失実験により調べ、KCNK3MTUS1はベージュ脂肪細胞の分化と熱産生機能に必要であることを示した。本研究の結果は、ヒト褐色脂肪細胞を用いた疾患モデルの作製や、熱産生調節因子の不偏的スクリーニングなどを容易にし、ヒトBAT研究に新たな機会をもたらす。

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