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糖尿病:FFA2およびFFA3の喪失は2型糖尿病でインスリン分泌を増加させ、耐糖能を改善する

Nature Medicine 21, 2 doi: 10.1038/nm.3779

2型糖尿病は世界的に重大な健康問題となっている。2型糖尿病の重要な特徴の1つは、血糖値が高くても、それが膵ベータ細胞に対する刺激となって正常な血糖値の維持に十分な量のインスリンを膵ベータ細胞から放出できないことである。従って、ベータ細胞機能を改善する新しい治療戦略は有益であると考えられている。本論文では、短鎖脂肪酸受容体のFFA2(FFAR2にコードされる)およびFFA3(FFAR3にコードされる)がマウスおよびヒトの膵ベータ細胞に発現していて、Gi型Gタンパク質と共役してインスリン分泌の阻害に関わっていることを明らかにする。また、食餌誘発性の肥満で2型糖尿病のマウスでは、対照の非肥満マウスと比較すると、FFA2およびFFA3の内因性アゴニストである酢酸の膵島での局所形成が増加しており、それに加えて酢酸の全身レベルも上昇していることが実証された。酢酸レベルのこのような上昇は、高血糖に応答するベータ細胞の肥満状態での能力不足の一因となっている可能性がある。実際に、この2つの受容体を全身レベルあるいは膵ベータ細胞特異的に遺伝学的に欠失させたマウスを高脂肪食で飼育すると、対照マウスと比較して、インスリン分泌の増大および耐糖能の大幅な改善が起きていることが分かった。一方、腸細胞でFfar2およびFfar3を欠失させても、糖尿病マウスの耐糖能に変化が見られなかったことは、これらの受容体がベータ細胞で細胞自律的に機能してインスリン分泌を調節していることを示唆している。総合すると、糖尿病状態では、酢酸レベルの上昇がFFA2およびFFA3に影響を及ぼし、グルコース刺激による適切なインスリン分泌を阻害していることが明らかになった。2型糖尿病ではFFA2およびFFA3のアンタゴニストがインスリン分泌を改善すると考えられる。

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