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エイズ:MARCH8はエンベロープ糖タンパク質のウイルス粒子への取り込みを低下させることによってHIV-1感染を阻害する

Nature Medicine 21, 12 doi: 10.1038/nm.3956

MARCH8(membrane-associated RING-CH8)は、最近発見されたRING(really interesting new gene)フィンガーE3ユビキチンリガーゼのMARCHファミリーに属する11メンバーの1つである。MARCH8は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)-II、CD86、インターロイキン(IL)1受容体アクセサリータンパク質、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)受容体1およびトランスフェリン受容体などの複数の宿主膜貫通タンパク質の発現を低下させる。しかしながら、その生理的な役割はほとんど知られていない。今回我々は、MARCH8が新規抗ウイルス因子であることを突き止めた。MARCH8のウイルス産生細胞での異所性発現は、レンチウイルス産生のレベルには影響しないが、ウイルスの感染性を著しく低下させる。MARCH8は、HIV-1エンベロープ糖タンパク質のウイルス粒子への取り込みを、おそらくはそれらとの相互作用を介して細胞膜での発現を低下させることにより阻害するため、結果としてウイルス侵入効率が大幅に低下する。水胞性口炎ウイルスG糖タンパク質へのMARCH8の阻害効果はさらに顕著であることから、MARCH8によるエンベロープウイルスの感染阻害は広範囲にわたっていると考えられる。MARCH8の内因性発現は単球由来マクロファージおよび樹状細胞で高く、マクロファージでのMARCH8のノックダウンもしくはノックアウトは、これらの細胞によって産生されたウイルス粒子の感染性を大幅に増大させる。従って我々の知見は、MARCH8は最終分化した骨髄系細胞で高度に発現している強力な抗ウイルスタンパク質で、エンベロープ糖タンパク質を標的としてそのウイルス粒子への取り込みを低下させることを示している。

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