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神経疾患:神経因性疼痛で見られる機械的異痛症をTLR5が介在するA繊維遮断により抑制する

Nature Medicine 21, 11 doi: 10.1038/nm.3978

正常時には無害な低閾値の機械的刺激により誘導される機械的異痛症は、神経因性疼痛の主要な特徴である。高閾値の細くて無髄鞘のグループC神経繊維(C繊維)の遮断あるいは切断が機械的異痛症に及ぼす影響は限定的である。これまで、太くて有髄鞘のグループA繊維、特にAβ繊維が機械的異痛症に関与するとされてきたが、A繊維選択的に働く薬理学的遮断物質はまだ見つかっていない。本論文では、神経因性疼痛でA繊維を標的として活動を停止させるための新規な方法を報告する。後根神経節(DRG)では、Toll様受容体5(TLR5)が太いA繊維ニューロンでニューロフィラメント200と共発現していることが分かった。TLR5をそのリガンドのフラジェリンで活性化すると、膜不透過性のリドカイン誘導体QX-314がニューロン内へと移動し、マウスDRGの主としてA繊維でTLR5に依存してナトリウム電流が遮断される。フラジェリンとQX-314(フラジェリン/QX-314)を足底内に同時投与すると、化学療法や神経傷害、糖尿病性神経障害の後の機械的異痛症が用量依存的に抑制されたが、Tlr5欠損マウスではこのような抑制が起こらなかった。in vivoでの電気生理学的研究によって、フラジェリン/QX-314の同時投与が、無処置および化学療法を受けたマウスでAβ繊維での伝導を選択的に抑制することが分かった。TLR5を介するAβ繊維遮断も、化学療法誘導性の進行中の疼痛を運動機能を損なうことなく軽減したが、カプサイシン誘導性C繊維遮断では軽減は見られなかった。さらに、フラジェリン/QX-314の同時投与は太いヒトDRGニューロンでナトリウム電流を抑制した。従って、今回の結果はAββ繊維を標的として神経活動を停止させ、神経因性疼痛を治療するための新たな手段を提供するものといえる。

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