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精神性疾患:ACFクロマチンリモデリング複合体はストレス誘発性のうつ様行動を仲介する

Nature Medicine 21, 10 doi: 10.1038/nm.3939

大うつ病性障害(MDD)の治療法の改良は、障害の原因となる生物学的機序の解明が限られていることで、難航している。MDDの発症には、大脳辺縁系神経回路でのストレス誘発性転写調節不適応が関わっている可能性が高く、それはおそらくクロマチン構造を調節しているエピジェネティックな因子を介していると考えられている。今回我々は、ストレス感受性マウスやうつ状態にあるヒトの側坐核で起こる、ATP依存性クロマチンリモデリング複合体であるACF(ATP-utilizing chromatin assembly and remodeling factor)の持続的な発現上昇がストレス誘発性のうつ様行動に必要であることを確証した。慢性的なストレスを受けた後に生じたACF結合の変化は、ヌクレオソームの配置の変化と相関していることが分かり、こうした関係は影響を受ける遺伝子の転写開始部位周辺で特に顕著だった。ACF結合とヌクレオソームの配置に見られるこのような変化は、ストレス感受性に関係する遺伝子の発現抑制と関連していた。まとめると今回の知見は、ACFクロマチンリモデリング複合体が、うつへの感受性の発生やストレス関連行動調節に不可欠の因子であることを明らかにしている。

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