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がん:Gタンパク質βサブユニットの変異は形質転換およびキナーゼ阻害剤耐性を促進する

Nature Medicine 21, 1 doi: 10.1038/nm.3751

Gタンパク質α(Gα)サブユニットをコードする遺伝子の活性化型変異はヒトがん全体の4~5%に見られるが、Gβサブユニットの発がん性変化は特徴が明らかになっていない。本論文では、Gβタンパク質のGNB1およびGNB2に頻発する変異が、サイトカイン非依存的増殖を引き起こし、Gタンパク質のカノニカルシグナル伝達を活性化することを実証する。GNB1に生じた複数の変異は、下流のエフェクターやGαタンパク質との結合に使われるタンパク質境界面に影響を及ぼし、Gβγ二量体とGαとの相互作用を妨害する。Gβタンパク質に生じた多様な変異は、一部の細胞系譜に集中しているものがある。例えば、11個のGNB1 K57変異は全てが骨髄性腫瘍で見られ、また8個のGNB1 I80変異のうちの7個はB細胞性腫瘍で見られた。Cdkn2a欠失マウス骨髄細胞に患者由来のGNB1変異を発現させ、骨髄移植を行うと、骨髄性腫瘍あるいはB細胞性腫瘍のどちらかが引き起こされた。PI3K-mTOR二重阻害剤BEZ235をin vivo投与すると、GNB1によって誘導されるシグナル伝達が抑制され、また、生存率が大幅に上昇した。複数のヒト腫瘍で、GNB1をコードする遺伝子の変異は、BCR-ABL融合タンパク質、JAK2のV617F変異やBRAFのV600K変異などの発がん性キナーゼの変化と共に見られる。患者由来のGNB1変異とこれらの変異型キナーゼとを共発現させると、それぞれの条件下で阻害剤抵抗性が生じた。従って、GNB1およびGNB2の変化は、広範囲にわたるヒト腫瘍で形質転換およびキナーゼ阻害剤耐性表現型を生じさせ、これらの変化はGタンパク質シグナル伝達の阻害剤で標的化できる可能性がある。

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