Editorial

エボラ熱の流行を行動のきっかけとしよう

Nature Medicine 20, 9 doi: 10.1038/nm.3689

2014年に西アフリカで始まったエボラウイルス感染流行の規模、感染拡大の速度と予想される拡散範囲は、研究者、製薬関連業界、そして関係各国の政府に対して、新興感染症の研究と治療への資源の投入が引き続き欠かせないことを告げる警鐘となっている。今回のエボラ出血熱流行は、これまでの流行に比べて死亡率こそ低いものの、感染者数は1976年以降で最大となっており、流行がいつ終わるのか、またどこまで広がるのかは予測不能な状態だが、流行が押さえ込まれるまでには数か月を要し、大規模な規制が必要であることは確実と考えられる。今回の流行を拡大させた一因は、患者の治療や隔離を行う施設の不足や、エボラウイルス感染に対する医療関係者や関係機関の経験不足であり、これはSARSやMERS、マールブルグ出血熱などの他の新興感染症の場合でも同じと推測される。また、治療薬やワクチンについて、ヒトでの大規模感染という事態が考えられていなかったことも大きく影響した。このような非常事態にあって、WHOは未認可薬の使用を認め、ZMappなどのいくつかが使われて、ある程度の効果が見られたが、薬剤のストックは既になくなったものが多い。候補薬品のどれを選んで開発を進め、ストックしたらよいのか、またどの国がストックすべきなのかは重大な難問である。一方、ウェルカムトラストは、現在および将来のエボラ熱流行を対象とした研究計画に対して迅速に研究費を援助し、またアフリカが直面している、感染症を含めた公衆衛生上の諸問題を扱う研究に対しても、5年間にわたって研究費を補助するという独自の計画を発表した。新興感染症の次の流行を押さえ込んで人類が生き延びるには、全ての国々が監視、予防、封じ込め、治療、教育に持続的に投資していくことが不可欠である。これを完璧に行わないことは非倫理的と言わざるをえない。

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