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がん:ALK融合遺伝子陽性の肺がんでIGF-1RとALKを共標的化することへの論理的根拠

Nature Medicine 20, 9 doi: 10.1038/nm.3667

クリゾチニブは選択的なチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)で、ALK(anaplastic lymphoma receptor tyrosine kinase)をコードする遺伝子の融合変異を持つ肺がんの患者で著効を示すが、一次応答のばらつきや獲得耐性により、その効果が制限されている。ALK融合遺伝子陽性肺がんを発症していて、インスリン様増殖因子1受容体(IGF-1R)特異的抗体に対して例外的に高い応答を示す患者の臨床所見から始まった研究で、我々はALK阻害剤とIGF-1R阻害剤の間に治療相乗作用が見られることを見いだした。IGF-1Rと同様に、ALK融合タンパク質もアダプター分子であるIRS-1(insulin receptor substrate 1)に結合し、IRS-1のノックダウンはALK阻害剤の抗腫瘍効果を増強する。ALKのTKI耐性モデルではIGF-1R経路が活性化されており、ALK阻害剤とIGF-1R阻害剤を併用することで治療効果が改善される。この知見と一致して、IGF-1RとIRS-1のレベルは、クリゾチニブ単独投与を行っている患者からの生検標本では上昇していた。まとめると、これらのデータはALK TKI感受性とALK TKI耐性の両方の状態にIGF-1R—IRS-1経路が役割を持つことを裏付けており、またALKとIGF-1Rに対する二重阻害剤の臨床開発に生物学的根拠を与えるものである。

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