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造血:ストレス造血を調節する酢酸スイッチ

Nature Medicine 20, 9 doi: 10.1038/nm.3587

哺乳動物成体の腎臓あるいは肝臓で合成されるホルモンであるエリトロポエチン(EPO)は赤血球産生を制御し、ストレス応答性転写因子である低酸素誘導因子2(HIF-2)によって調節されている。我々は以前に、リシンアセチルトランスフェラーゼのCREB結合タンパク質(CBP)が、低酸素状態でHIF-2αのアセチル化とHIF-2に依存する効率のよいEPO誘導に必要であることを報告した。本論文では、これらの過程に酢酸依存性のアセチルCoAシンターゼ2(ACSS2)が必要であることを示す。ヒトのHep3B肝細胞がん細胞、また低酸素状態あるいは急性貧血のマウスのEPO産生器官では酢酸レベルが上昇していて、HIF-2αのアセチル化、CBP—HIF-2α複合体の形成、EPOエンハンサーへのCBP—HIF-2αの動員およびEPO遺伝子発現の効率のよい誘導にACSS2が必要とされる。急性貧血のマウスでは、酢酸の補給がACSS2依存的にストレス造血を増強する。さらに、後天性および遺伝性の慢性貧血マウスモデルでは、酢酸の補給はEPO発現と安静時ヘマトクリット値を上昇させる。従って、哺乳類のストレス応答性酢酸スイッチは、組織の低酸素を特徴とする病的状態の際にHIF-2シグナル伝達とEPO誘導を制御している。

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