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うつ病:脳に高濃度で存在するマイクロRNAで霊長類特異的なmiR-1202は大うつ病性障害と抗うつ剤治療に関与している

Nature Medicine 20, 7 doi: 10.1038/nm.3582

大うつ病性障害(MDD)は広く見られる気分障害で、脳の前頭前野の特異的な遺伝子発現パターンと関連している。MDDの治療には、さまざまな生物心理社会学的方法が含まれる。医療現場では、うつ病エピソードに対して最も一般的な治療法は抗うつ剤投与で、抗うつ剤は北米で最も多く処方される薬剤の1つである。抗うつ剤は明らかに有効であり、特に中等度から重度のうつエピソードに対して効果が著しいが、抗うつ剤投与に対する個々の患者の反応にはばらつきがある。抗うつ剤に対する不応性は、患者やその家族にとって、個人的、経済的、社会的に重大な影響がある。遺伝子がマイクロRNA(miRNA)の活性によって調節されていることを実証する証拠は複数得られており、マイクロRNAは遺伝子発現のファインチューナーとして、またオン・オフ切り替えスイッチとして機能する。本論文では、ヒトの死後脳標品、細胞分析、うつ病患者を対象にした臨床試験で得られた標品を用いた相補的な研究について報告し、うつ病患者では、霊長類に特異的でヒト脳に高濃度で存在するmiRNAであるmiR-1202の発現に差異があることを示す。また、miR-1202は代謝型グルタミン酸受容体4をコードしている遺伝子(GRM4)の発現を調節しており、これによって治療開始前の抗うつ剤応答性が予測される。今回の結果は、miR-1202がうつ病の病態生理に関係しており、新規抗うつ剤治療の標的となる可能性があることを示唆している。

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