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神経疾患:ハンチントン病マウスモデルで変異ハンチンチン発現を低減し疾患を軽減するための神経標的

Nature Medicine 20, 5 doi: 10.1038/nm.3514

ハンチントン病(HD)は、優性遺伝性の不治の神経変性疾患で、CAGリピート数の増加によって起こるハンチンチンのポリグルタミン鎖伸長が原因である。HDでは、変異型ハンチンチン(mHTT)は全ての細胞に広く発現するが、皮質と線条体での神経変性が選択的に引き起こされる。このような選択的な神経脆弱性の基盤となる機構は分かっていない。この難問を解くためには、mHTTの発現がこの疾患の病理発生の原因となっている細胞種を明らかにすることが必要である。我々は、細菌の人工染色体導入遺伝子(BACHD)からヒト完全長mHTTを発現する条件的遺伝子改変HDマウスモデルで、線条体、皮質、あるいはこの両方のニューロン集団でmHTTの発現を遺伝学的に低下させた。BACHDマウスの皮質でのmHTT発現低下は、運動および精神様行動の異常を部分的に軽減するが、神経変性は改善されない。しかし、線条体および皮質の両方のニューロン集団でmHTT発現を低下させると、このHDモデルで見られる全ての行動異常と選択的な脳萎縮が一貫して軽減する。また、皮質あるいは線条体のニューロンでのmHTT発現低下は、皮質線条体シナプス機能障害を部分的に回復させるが、皮質と線条体の両方の神経細胞種でmHTT発現を低下させると、線条体シナプス機能の回復がさらに進む。我々の研究は、HDの病理発生に、皮質および線条体のmHTTが別個だが相互に関連する役割を持つことを実証するもので、適切なHD治療には皮質ニューロンと線条体ニューロンの両方のmHTTを標的とすることが必要である可能性を示唆している。

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