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神経疾患:REDD1はストレス誘導性シナプス喪失およびうつ行動に不可欠である

Nature Medicine 20, 5 doi: 10.1038/nm.3513

大うつ病性障害(MDD)は人口の最大17%に影響しており、個人的には深刻な苦しみを引き起こし、また重大な経済的損失の原因となっている。臨床および前臨床研究で、長期にわたるストレスやMDDが、皮質および辺縁系脳領域のニューロン萎縮に関連することが明らかになっているが、このような形態学的変化の基盤となる分子機構はまだ明らかになっていない。本論文では、ラットの前頭前皮質(PFC)では、ストレスがmTORC1(mammalian target of rapamycin complex-1)の阻害因子であるREDD1(regulated in development and DNA damage responses-1)の濃度を上昇させることを示す。この上昇と同時にmTORC1のシグナル伝達標的のリン酸化の低下が起こっているが、mTORC1はタンパク質合成に依存するシナプス可塑性に関与することが示されている。MDD患者の死後PFCでは、マッチする対照に比べて、REDD1レベルが上昇していることも分かった。REDD1をコードする遺伝子を欠失する変異マウスは、慢性的で予測不能なストレスが原因の行動異常、シナプス欠落およびmTORC1シグナル伝達障害が起こりにくくなるが、ラットPFCでのウイルスを使ったREDD1の過剰発現は、それだけで不安様およびうつ様の行動やニューロン萎縮を引き起こす。まとめると、死後脳および前臨床的実験から得られたこのような知見は、REDD1が慢性的なストレス曝露によって引き起こされるニューロン萎縮やうつ行動の重要な仲介因子であることを明らかにしている。

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