Editorial

健康の値段

Nature Medicine 20, 4 doi: 10.1038/nm.3538

C型肝炎ウイルス(HCV)感染を治療するための有望な新薬が登場した。この薬はC型肝炎の流行を止めることになるかもしれない。だが、その値段は法外なもので、必要とする患者の大半は手が届かないことになりそうだ。WHOによれば、HCVに慢性感染している患者は1億5千万人に及び、感染が原因の肝臓障害により毎年35万人が死亡している。そのため、最近開発された直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は、流行防止と患者の肝臓障害の防止の両方の点で大いに期待されている。DAAは従来の標準治療法に比べて有効性が高く、副作用も少なく、治療期間も短いのだが、12週の治療に要する費用は6万6千ドルから8万4千ドルになる。これとインターフェロンとリバビリンを使う標準治療を併用し、さらに受診その他の費用が加わるとしたら、その額は膨大なものとなり、これを使えるのは富裕な国家の金持ちたちだけということになるだろう。感染症対策へ政府などが投資することは世界的な傾向である。新規な感染症に備えるのに加えて、治療の選択肢を誰もが確実に使えるようにするのにも、こうした投資は必要だ。この治療薬を使うべき状態の患者が使うのは「当然の権利」であって、「特権」ではないことを保証するには、患者と政府が確固たる態度で臨むことが必要不可欠であろう。

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