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肥満:褐色脂肪に高濃度に存在する分泌因子Nrg4は肝臓での脂質生合成低下を介して代謝恒常性を維持する

Nature Medicine 20, 12 doi: 10.1038/nm.3713

褐色脂肪は低温に応答して脱共役呼吸を活性化し、全身の代謝恒常性に寄与している。これまで、褐色脂肪の代謝作用の主要なものは、脂肪酸化と脱共役タンパク質1(UCP1)が仲介する熱産生への関与であると考えられていた。褐色脂肪が分泌因子を介して他の組織に影響を及ぼすかどうかはほとんど調べられていない。本論文では、細胞外リガンドの上皮増殖因子(EGF)ファミリーに属するニューレグリン4(Nrg4)が脂肪組織で高度に発現され、褐色脂肪中に濃縮されていて、褐色脂肪細胞の分化の際には濃度が顕著に上昇することを示す。肥満した齧歯類とヒトでは、脂肪組織のNrg4発現は低下していた。マウスでの機能獲得性および機能喪失性実験から、Nrg4が肝臓の脂質生合成シグナル伝達の減弱により、食餌により誘発されたインスリン抵抗性や肝臓の脂肪症を防御することが実証された。機構的には、Nrg4は肝細胞でErbB3およびErbB4シグナル伝達を活性化し、LXRおよびSREBP1cが仲介する細胞自律的なde novo脂質生合成を負に調節する。これらの結果は、Nrg4が褐色脂肪内に高濃度で存在する内分泌因子であって、2型糖尿病や非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)などの肥満関連疾患の治療に使える可能性を持つことを明らかにしている。

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