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血液学:巨核球は造血幹細胞の恒常的静止状態を維持し、傷害後の再生を促進する

Nature Medicine 20, 11 doi: 10.1038/nm.3706

造血幹細胞(HSC)を調節するニッチ細胞としては、複数種の骨髄間質細胞が見つかっている。しかし、HSC子孫細胞がHSCニッチ細胞として直接機能できるかどうかは、これまで分かっていなかった。本論文では、巨核球(MK)が、恒常状態でのHSCの静止状態維持、および化学療法によるストレス後のHSC再生促進という2つの役割を持つことを報告する。MKはマウス骨髄ではHSCと物理的に結合しており、またMKの除去は静止状態のHSCの活性化につながり、その結果HSC増殖が亢進することが分かった。RNA塩基配列解読(RNA-seq)解析から、MKではトランスフォーミング増殖因子β1(Tgfb1にコードされる)が他の間質ニッチ細胞よりも高いレベルで発現していることが明らかになった。MKを除去すると、生物学的活性のあるTGF-β1タンパク質の骨髄中レベルの低下と、HSCの核に局在するリン酸化SMAD2/3(pSMAD2/3)の減少が引き起こされたことから、MKはTGF-β–SMADシグナル伝達を介してHSCの静止状態を維持していると考えられた。実際に、MKを除去したマウスにTGF-β1を注射するとHSCの静止状態が回復され、また、MKでTgfb1を条件付き除去すると、HSCの活性化および増殖が増加した。これらのデータは、TGF-β1がMKから生じる最有力のシグナルであり、HSCの静止状態を維持していることを実証している。しかし、化学療法への曝露という条件下では、MKの除去はHSC増殖の重度の障害を引き起こした。MK由来の繊維芽細胞増殖因子1(FGF1)シグナル伝達は、ストレスに応答してTGF-βの阻害性シグナル伝達を一過性に抑制するようになり、HSC増殖を促進する。まとめると、これらの知見は、MKがHSC由来のニッチ細胞として機能してHSC機能を動的に調節していることを実証している。

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