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腎疾患:循環血中angiopoietin-like 4はネフローゼ症候群で見られるタンパク尿と高トリグリセリド血症を結びつける

Nature Medicine 20, 1 doi: 10.1038/nm.3396

ネフローゼ症候群で見られるタンパク尿と高脂血症を結びつける分子が何かは分かっていない。本論文では、血漿に含まれるAngptl4(angiopoietin-like 4)が、2つの負のフィードバックループを介してタンパク尿と高トリグリセリド血症を結びつけていることを示す。我々は、ヒト微小変化群を模倣するラットモデルを用いた以前の研究で、足細胞からタンパク尿促進性の低シアル化型Angptl4が局所的に分泌されることを観察した。しかし今回、等電点が中性であることから通常レベルのシアル化状態にあると思われるAngptl4の血清中濃度は、他の糸球体疾患でも高いことが分かった。循環血中のAngptl4は、タンパク尿のレベルがネフローゼ症候群の域に達した際に血漿中の遊離脂肪酸(FFA)のアルブミンに対する比が上昇するのに応じて、腎以外の臓器から分泌された。全身的に働くフィードバックループでは、循環血中のAngptl4プールは、糸球体内皮細胞αVβ5インテグリンとの相互作用によってタンパク尿レベルを低下させた。Angptl4とβ5インテグリンとの相互作用の阻害、あるいはAngptl4もしくはβ5インテグリンの全身性ノックアウトによって、複数の動物モデルでタンパク尿ピークからの回復が遅延した。しかしこれと同時に、局所的フィードバックループではAngptl4の腎外プールの増加によって、骨格筋、心臓、脂肪組織でのFFA取り込み量が低下し、その結果として高トリグリセリド血症が生じたが、これはリポタンパク質リパーゼ(LPL)による血漿トリグリセリドからFFAへの加水分解が阻害されるためである。LPLとの重要な相互作用部位を修飾したヒト組換えANGPTL4を、ネフローゼ症候群を発症したBuffalo Mna系ラットおよびZucker糖尿病肥満ラットに注射すると、全身性ループを介するタンパク尿レベル低下が見られたが、局所性ループは回避されて血漿トリグリセリド濃度は上昇しなかった。これらの結果は、ネフローゼ症候群域のタンパク尿に応じて起こる循環血中Angptl4の増加はタンパク尿を軽減するが、その代償として高トリグリセリド血症が誘発されることを示しており、このような連結した病態に対して可能と思われる治療法を示唆している。

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