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脆弱X症候群:内在性カンナビノイド系を標的とした脆弱X症候群の治療

Nature Medicine 19, 5 doi: 10.1038/nm.3127

脆弱X症候群(FXS)は、FMR1遺伝子のサイレンシングによって引き起こされ、単一遺伝子障害による遺伝性知的障害や自閉症の最もよくみられる原因となっている。このサイレンシングは、シナプスに発現するRNA結合タンパク質で翻訳を調節しているFMRP(fragile X mental retardation protein)の喪失につながる。Fmr1ノックアウトモデルはFXSの主な形質を再現する。代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)活性やmTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル伝達活性の脱制御は、この疾患の病態生理学的性質に重要らしい。内在性カンナビノイド系(ECS)は、シナプス可塑性、認知機能、不安、侵害受容および発作感受性の重要な修飾因子であり、こうした症状のすべてがFXSでは障害される。ECS受容体であるCB1(CB1R)およびCB2(CB2R)は、リン脂質由来の内在性カンナビノイドによって活性化される。mGluR5がシナプスで活性化されると、内在性カンナビノイドの合成が開始され、CB1Rによるシナプス伝達強度の長期抑圧が促進される。特に、Fmr1ノックアウトマウスの複数の脳領域では、mGluR5の活性化が変化している。今回我々は、雄のFmr1ノックアウト(Fmr1−/y)マウスで薬理学的および遺伝学的手法によりCB1Rの働きを遮断すると、認知機能障害、侵害受容脱感作、聴原発作感受性、mTORシグナル伝達の過剰活性化および樹状突起棘形態の変化が正常化されるが、CB2Rの薬理学的遮断では、抗不安様行動が正常化されることを見いだした。これらの形質の一部は、mTORあるいはmGluR5の薬理学的阻害によっても回復した。したがって、ECSの遮断は、FXSでみられる特定の変化を正常化する治療法になる可能性がある。

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