Technical Report

幹細胞治療:造血幹細胞移植後のT細胞レパートリー回復の定量的評価

Nature Medicine 19, 3 doi: 10.1038/nm.3100

同種造血幹細胞移植(同種HSCT)後のT細胞数の回復遅延やT細胞受容体(TCR)多様性の低下は、感染症やがん再発のリスク増大と関連している。同種HSCT後のTCR多様性の正確な測定は、技術的な難しさのために制限されてきた。今回我々は、相補的DNA末端5′急速増幅PCR法(RACE PCR法)と大規模塩基配列解読法を組み合わせ、同種HSCTを受けたレシピエント28人のTCR多様性を単一オリゴヌクレオチド対を用いて定量した。同一患者から2回ずつ採取した血液試料の解析から、個々のTCR種の頻度が正確に決定されたことが確認された。移植の6か月後、臍帯血移植レシピエントのTCR多様性は健常人のものに近かったが、T細胞が非常に少ない末梢血幹細胞移植を受けたレシピエントでは、CD4+T細胞とCD8+T細胞の多様性がそれぞれ28分の1と14分の1に低下していた。12か月後、これらの不全状態はCD4+T細胞成分については改善されたが、CD8+T細胞成分については改善されなかった。総合すると、この手法は、同種HSCT後のT細胞レパートリーの回復に関する従来なかった評価を提供するものであり、感染症やがん再発のリスクが高い患者の検出につながると考えられる。

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