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心疾患:Ca2+緩衝を遅延させることをねらって設計された非典型的EFハンドモチーフは心機能を増強する

Nature Medicine 19, 3 doi: 10.1038/nm.3079

EFハンドタンパク質は、細胞シグナル伝達に非常に広くかかわっている。典型的なEFハンドタンパク質であるパルブアルブミン(Parv)は、多くの生物系で高親和性のCa2+緩衝物質となっている。Ca2+シグナル伝達は健康や疾患に重要な役割を持つことから、新たな生物学的活性を持つように設計されたEFハンドモチーフは多様な用途があると考えられる。本論文では、EFハンドモチーフの機能を破壊すると考えられる置換である、Parvの第2カチオン結合ループドメインの12番目のグルタミンのグルタミン酸への置換(ParvE101Q)は、相対的な陽イオン親和性を大きく逆転させることを報告する。この置換によって、Mg2+親和性が上昇し、Ca2+親和性が低下して、きわめて緩徐な働きを持つ、これまでなかったCa2+緩衝物質が形成され、これは心臓の弛緩を促進するという好ましい性質を持っている。治療効果を調べる実験では、in vitroおよびin vivoの拡張機能不全疾患モデルでParvE101Qを発現させると、正常なParvの発現によりもたらされる筋細胞内在性の重度の収縮障害が完全に回復し、心筋の異常な弛緩が修正された。新規なEFハンドモチーフドメインを戦略的に設計して細胞内Ca2+シグナル伝達を調整することは、疾患心臓などのCa2+ハンドリング異常を伴う多くの生物系に役立つと考えられる。

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