Editorial

がんの標的治療:がんに遅れをとらない

Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3395

基礎研究と臨床研究の境界領域では、がんの詳しい解明と治療に向けた重要な進展が見られている。この特集では、がんのトランスレーショナル研究において最も大きな関心を集めている問題のいくつかを取り上げ、この分野での最近の進歩をまとめ、近い将来に期待できる進展について論じた総説を集めた。がんのゲノミクスと標的治療の出現は、臨床におけるがんの全体像を速やかに変える可能性がある。ゲノム塩基配列解読が基盤となって得られた大量の情報が統合されれば、腫瘍の進展の詳細が明らかになると予想される。また、標的治療の時代の到来によって、治療応答に対する腫瘍の複雑な挙動や微小環境因子の重要な寄与が明らかになってきただけでなく、腫瘍が治療に応答する仕組みや、治療が失敗する理由についての手掛かりも得られつつある。この特集では、がんのトランスレーショナル研究の専門家たちが、腫瘍のプログレッション、治療応答や治療に対する耐性の基盤となる生物学的性質を解明した最近の進展について、詳細な解析と考察を行っている。そして、これらの総説は共通して、現在のがん研究がダイナミックに進展している点を強調している。新規な治療標的は、主要な発がん遺伝子の範囲を越えて活発に探索が行われており、臨床における知見は、腫瘍の不均一性やその発生についての解明を推し進めつつある。我々はこの総説特集が関係者にとって刺激となり、がんのトランスレーショナル研究をその目標に向けて推し進めることを願っている。

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