Review

がんの標的治療:腫瘍のプログレッションと転移の微小環境による調節

Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3394

がんは複雑な組織環境中で発生し、がんの持続的増殖、浸潤と転移はそうした環境に依存している。腫瘍微小環境(TME)内にあるストローマ細胞は、腫瘍細胞とは違って遺伝的に安定であるため、耐性獲得や腫瘍再発のリスクが低い、有望な治療標的となる。しかし、腫瘍発生前段階でのTMEの特異的破壊は極めて難しい。それはTMEが腫瘍の発生に対して有利にも有害にもなりうる多様な能力を備えているからである。さらに、微小環境ががん細胞を正常化する能力を持つことも多くの研究によって示されており、TME自体の選択的除去ではなく、ストローマ細胞を「再教育」することのほうが、がん治療には効果的な戦略となる可能性が示唆されている。本総説では、がんのプログレッションと転移の特定の段階でTMEが果たす、一見矛盾している役割に加えて、TME中のストローマ細胞を再教育して抗腫瘍形成効果を持たせるという最近試みられている治療についても論じる。

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