Technical Report

遺伝子治療:がん患者の血中リンパ球から10日以内でTCRを得て機能を確認できる新しいクローニング・発現システム

Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3358

抗原特異的T細胞療法、つまりT細胞受容体(TCR)遺伝子治療は、感染症やがんに対する有望な免疫療法である。しかし、抗原特異的なTCRを迅速かつ直接的にスクリーニングする適切な系は現在のところない。今回我々は、抗原特異的な単一のヒトT細胞に由来するTCR cDNAの抗原特異性を10日以内に決定できる、高効率のクローニング・機能評価システムについて報告する。我々はこのシステムを使って、エプスタイン・バーウイルスに潜伏感染した10人の健康なドナーから得た380のエプスタイン・バーウイルス特異的TCRのクローニングおよび解析を行い、これらのTCRを発現させた細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が、抗原ペプチドを持つ標的細胞に対して示す細胞傷害活性を評価した。さらに、このシステムを使ってペプチドワクチンを接種したがん患者由来の腫瘍抗原特異的TCRをクローニングした。210の腫瘍関連抗原特異的なTCRが得られ、これらのTCRを発現するCTLが、ペプチドを持つ細胞に対して細胞傷害活性を示すことを明らかにした。このシステムは、感染症やがんに対するTCR遺伝子治療のための迅速かつ強力な手法となる可能性がある。

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