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肝炎:妊娠中の持続性HCV感染で見られる免疫エスケープ変異の消失は垂直伝播したウイルスの複製を増強する

Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3351

世界全体では、妊婦のほぼ1%がC型肝炎ウイルス(HCV)に持続感染している。HCVの母子伝播は妊娠の3〜5%で発生しており、新生児感染のほとんどはこれが原因である。HCV特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は急性HCV感染時のウイルスのクリアランスには不可欠だが、持続感染の60〜80%では、この細胞は機能的に疲弊してしまうか、もしくはT細胞による認識を回避する変異ウイルスを選び出す。妊娠中に見られるHCV複製の亢進は、母胎間の免疫寛容機構がHCV特異的CTLをさらに損なって、持続感染しているウイルスに対する選択圧を制限している可能性を示唆している。この可能性を検討するために、我々は2人の女性被験者で、連続した2回の妊娠について、妊娠中と妊娠後に循環血中ウイルスの多種性を解析した。これにより、HLAクラスIエピトープ中のエスケープ変異の一部が妊娠中に消失し、これに伴ってより適応度の高いウイルスが出現したことが明らかになった。CTLの選択圧は出産後に再び生じ、この時点でこのようなエピトープ中のエスケープ点変異は多様なウイルス中で再び優勢となり、ウイルス負荷は急激に低下した。周産期に伝播したウイルスがエスケープ変異の回復によって適応度が高くなっていたものであることは重要である。我々の知見は、妊娠時の免疫調節変化がHCVクラスIエピトープに対するCTL選択圧を低下させ、それによって最適化された複製適応性を持つウイルスの垂直伝播が促進されることを示している。

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