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心疾患:Mst1はBeclin1とBcl-2間の結合促進によりオートファジーを阻害する

Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3322

本論文では、アポトーシス誘導性キナーゼであるMst1がオートファジーの阻害により、心臓でのタンパク質の品質管理機構を障害することを示す。ストレスにより活性化されたMst1は、心筋細胞でオートファゴソームの形成を抑制し、その結果p62の集積とアグレソームの形成を促進する。Mst1はBeclin1のBH3ドメイン中の108番目のトレオニン(Thr108)をリン酸化する。このリン酸化は、Beclin1とBcl-2やBcl-xLとの結合を促進し、Beclin1のホモ二量体を安定化し、Atg14L-Beclin1-Vps34複合体のPI3キナーゼ活性を阻害してオートファジーを抑制する。さらに、Mst1はBeclin1とBcl-2やBcl-xLの結合を促進することにより、Baxの活性化を誘導し、その結果アポトーシスを活性化する。心筋梗塞マウスモデルでは、Mst1はオートファジーの阻害により心機能不全を促進し、それはThr108がリン酸化されたBeclin1量の増加と相関していた。また、ヒトの拡張型心筋症では、Thr108がリン酸化されたBeclin1量の増加とオートファジーの抑制を示唆する徴候とが認められた。これらの結果は、Mst1が、Beclin1のリン酸化と、それによるBeclin1、Bcl-2およびBaxの3者間の相互作用の調整によりオートファジーとアポトーシスを協調的に調節していることを示唆している。

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