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糖尿病:肝臓Hif-2α–Irs2経路は肝臓のインスリンシグナル伝達を亢進し、Vegfの阻害によって調整される

Nature Medicine 19, 10 doi: 10.1038/nm.3295

インスリンは、肝臓で多様な代謝応答を開始させ、その中には糖新生の抑制、グリコーゲン合成や脂質生成の誘導などが含まれる。肝臓にはよく発達した洞様毛細血管網が存在し、静脈周辺では肝臓の他の部分に比べて低酸素状態が進んでいて、糖新生が抑えられている。本論文では、非糖尿病C57BL/6マウスと糖尿病db/dbマウスではさまざまな血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害物質によって耐糖能が改善され、その際に肝臓のインスリンシグナル伝達が促進されて、糖新生に関わる遺伝子発現の低下、グリコーゲン貯蔵増大、肝臓での糖産生抑制が起こることを示す。VEGFの阻害は洞様毛際血管の退行を介して肝臓で低酸素状態を引き起こし、それによる低酸素誘導因子2α(Hif–2α、Epas1にコードされる)の安定化を介して肝臓でのインスリンシグナル伝達が亢進される。 HIF-2αの肝臓特異的な構成性活性化だけで、重要なインスリン受容体アダプタータンパク質の1つであるIrs2(insulin receptor substrate-2)の直接的、また間接的誘導を引き起こして肝臓のインスリンシグナル伝達を増強するのに十分であり、HIF-1αではこのような増強は起こらないことは注目に値する。さらに、肝臓のIrs2は、耐糖能および肝臓インスリンシグナル伝達に対するHif-2αおよびVegf阻害の影響を仲介するのに必要かつ十分であった。これらの結果は、Hif-2αを介した低酸素シグナル伝達と、Irs2の産生誘導を介して起こる肝臓でのインスリン作用経路に意外にも共通部分があり、この部分がVegf阻害薬の影響を受けて糖代謝を変化させることを明らかにしている。またこの研究は、肝臓代謝では、Hif-1αとHif-2αがそれぞれ解糖促進と糖新生抑制という異なる役割を担っていることを示しており、2型糖尿病に対する新たな治療法が考えられる。

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