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筋疾患:Trpv1を介するカルシウムシグナル伝達のnNOSおよびペルオキシナイトライトによる活性化は骨格筋肥大の重要な誘因である

Nature Medicine 19, 1 doi: 10.1038/nm.3019

骨格筋の萎縮は、加齢にともなって、またがんや糖尿病、エイズなどの病的状態において生じる。筋萎縮の治療は、筋萎縮中に活性化されるタンパク質分解経路の抑制、あるいは筋肥大を誘導するタンパク質合成経路の活性化のいずれかが基盤となる。今回我々は、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)が、一過性受容体電位陽イオンチャネルサブファミリーVメンバー1(TRPV1)の活性化により、負荷依存性の筋肥大を調節することを示す。過負荷依存的な筋肥大は、nNOSヌルマウスでは抑制されていた。nNOSは、過負荷後3分以内に一過的に活性化される。この活性化によって、ペルオキシナイトライト(NADPHオキシダーゼ4(Nox4)に由来するスーパーオキシドと一酸化窒素の反応産物)の形成が促進される。一酸化窒素とペルオキシナイトライトは次いでTrpv1を活性化し、その結果細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)の上昇が起こり、これがさらにmTOR(mammalian target of rapamycin)の活性化を引き起こす。特に、TRPV1アゴニストであるカプサイシンの投与は過負荷なしで筋肥大を引き起こし、脱負荷あるいは除神経により誘導される筋萎縮を軽減する。以上の結果は、一酸化窒素、ペルオキシナイトライト、[Ca2+]iが骨格筋への負荷を変換して細胞内シグナル伝達経路に送る重要なメディエーターであることを明らかにしており、TRPV1は筋萎縮治療の新たな標的となる可能性が考えられる。

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