Technical Report

再生医学:急速分解するエラストマーは無細胞性人工移植片から新しい動脈血管への迅速なリモデリングを可能にする

Nature Medicine 18, 7 doi: 10.1038/nm.2821

宿主性リモデリング(host remodeling:人工的な移植片への宿主細胞の侵入・定着・増殖による構造再構築)は、代用血管をはじめとする医療用移植組織の成功のために重要である。人工移植片や組織工学的に作製された移植片では、直径が5 mm未満の動脈について臨床的な有効性はまだ見られていない。今回我々は、無細胞性の生分解性エラストマー移植片を設計した。この移植片は迅速に分解され、ラット腹部大動脈に挿入移植した3か月後には、外来性材料をほとんど含まない新しい動脈血管ができあがった。この設計は、迅速な宿主性リモデリングを可能にすることに重点を置いている。移植の3か月後に生成したこの新しい動脈血管は、強くて同期した規則正しい脈動、融合性の内皮単層と収縮する複数の平滑筋層、エラスチンやコラーゲン、グリコサミノグリカンの発現、丈夫で柔軟な機械的特性などの点で、無傷動脈血管と類似していた。したがって今後は、ヒトの血管再生をもっとよく代行できる大型動物モデルを使った研究を行ってから、臨床へのトランスレーションに移行するのが正しいやり方であろう。この無細胞的手法は、血管組織工学で広く見られる細胞重視の考え方からの理性的移行といえるもので、再生医療全般に影響を与える可能性がある。

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