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痛覚過敏:Nav1.8のメチルグリオキサール修飾は侵害受容ニューロンの発火を促進し、糖尿病性神経障害における痛覚過敏の原因となる

Nature Medicine 18, 6 doi: 10.1038/nm.2750

本研究では、代謝性痛覚過敏の機序が、解糖系代謝物メチルグリオキサールによるものであることを立証している。血漿中メチルグリオキサールの濃度が600 nMを超えることが、糖尿病患者での疼痛の有無を分けるとわかった。メチルグリオキサールは感覚ニューロンを脱分極し、電位依存性ナトリウムチャネルNav1.8の翻訳後修飾を誘導する。このことは電気的興奮の亢進と侵害受容ニューロンの発火増加に結びつくが、その一方でメチルグリオキサールはNav1.7の緩徐な不活性化を促進する。マウスにメチルグリオキサールを投与すると、神経伝導速度の低下、カルシトニン遺伝子関連ペプチドの神経分泌促進、シクロオキシゲナーゼ2の発現上昇や、熱刺激および機械刺激による痛覚過敏が誘発される。この痛覚過敏は、疼痛プロセシングに関与する脳領域での血流増加となって表れる。また、ストレプトゾトシン誘発性および遺伝性の糖尿病マウスモデルでも同様の変化が認められるが、Nav1.8ノックアウト(Scn10−/−)マウスでは認められないことがわかった。メチルグリオキサール・スカベンジャーなどの複数の方法は、メチルグリオキサールや糖尿病によって誘発される痛覚過敏の症状軽減に有効である。代謝物によって駆動される痛覚過敏というこれまで報告されたことがなかったこの概念は、糖尿病性の有痛性神経障害に対する治療介入を設計する際の新たな基盤となる。

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