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神経疾患:中枢神経系の炎症によって誘導される血管新生は血管由来のプロスタサイクリンを介して神経回路の修復を促進する

Nature Medicine 18, 11 doi: 10.1038/nm.2943

血管新生は、中枢神経系(CNS)疾患の顕著な特徴で、炎症の持続的促進とその後の組織修復過程の両方にかかわっている。本論文では、新しく形成した血管由来のプロスタサイクリン(別名プロスタグランジンI2;PGI2)が、CNS炎症後に損傷を受けた神経回路の軸索修復を促進することを報告する。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を局所的に誘導すると、炎症病変周囲に新しい血管が形成され、次いで隣接する皮質脊髄路(CST)軸索枝の出芽がみられた。これらの出芽した軸索枝は代償性の運動神経回路を形成し、脳脊髄炎により失われた運動機能を回復させるものであった。脳毛細血管内皮細胞由来のプロスタサイクリンは、CSTニューロン上のI型プロスタグランジン受容体(IP受容体)に結合し、CST軸索の伸長を促進し、修復過程に寄与した。脳脊髄炎を誘導したマウスでプロスタサイクリン受容体シグナル伝達を抑制すると運動機能の回復が障害されるが、IP受容体アゴニストのイロプロストは軸索の修復と運動機能の回復を促進した。これらの知見は、神経回路の修復における血管新生の重要な機能を明らかにし、また、プロスタサイクリンがCNS疾患の機能的回復を高める有望な分子であることを示唆している。

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