Between Bedside and Bench

インフルエンザに対する闘いはなおも継続中:インフルエンザの伝播という難問

Nature Medicine 18, 10 doi: 10.1038/nm.2953

インフルエンザウイルスによって引き起こされる病状の重症度はさまざまで、深刻な症例となることもある。インフルエンザウイルスが疫学的な意味での「成功」を収めるかどうかに影響する要因はいくつかある。伝播の機構、それに予防および治療の戦略は、インフルエンザの疾患転帰や集団内の発生率に影響する。インフルエンザウイルスがヒト間でこれほど効率よく広がる理由とその仕組みを解明し、こうした伝播を抑止可能な方法を明らかにすることは、インフルエンザの動物モデルに限界があるために非常に難しい問題となっている。BEDSIDE TO BENCHではK SubbaraoとS S Lakdawalaが、ヒトのチャレンジ感染モデルを使ってインフルエンザ伝播の状況を調べた研究を詳しく検討している。この実験手法は、ヒトでのウイルス伝播はどのようにすれば解析可能なのかを明らかにしており、また、重症度や発生率のばらつきのような、動物の場合と異なる要因をはっきりさせるのに役立つ。ここで得られた知識は動物モデルを使う研究を最適化するのに活かせるだろう。インフルエンザで現れる症状の重症度を左右するもう1つの問題は、治療した患者に薬剤耐性株が出現する可能性である。BENCH TO BEDSIDEでは、A KelsoとA C Hurtがまた別の重要な問題について論じている。それは、許容変異が加わったために感染に適合して野生型ウイルス株と競合できるようになった薬剤耐性ウイルスの存在である。このようなウイルス株が未治療の人々で見つかり、しかも蔓延しうるという事実は、公衆衛生上の懸念をもたらし、新薬を探索したり抗ウイルス薬の組み合わせを評価したりする際の難問となっている。

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