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代謝:脂肪細胞ミトコンドリア活性のmitoNEETによる変化は、肥満時にインスリン感受性を維持するきわめて重要な適応過程を明らかにしている

Nature Medicine 18, 10 doi: 10.1038/nm.2899

ミトコンドリア外膜に存在するタンパク質であるmitoNEETの脂肪細胞での発現を変化させたモデルマウスを用い、mitoNEETがミトコンドリアの機能とそれに関連する細胞応答に及ぼす影響を調べた。mitoNEETの過剰発現は、脂質の取り込みと貯蔵を促進し、脂肪組織量の増大につながることがわかった。脂肪組織の増大は重度の肥満を生じるのにもかかわらず、良性の影響が大きくて、インスリン感受性は維持される。機構としては、mitoNEETはミトコンドリアのマトリックスへの鉄の輸送を阻害し、鉄は電子伝達における律速因子であることから、β酸化の速度を下げることが見いだされた。この作用は、ミトコンドリア膜電位低下と活性酸素種が惹起する傷害の低減に加えて、アディポネクチンの産生増加と関連している。逆に、mitoNEETの発現低下は、マトリックス中の鉄濃度上昇を介してミトコンドリアの呼吸活性を亢進させ、これは最終的に高脂肪食による体重増加の軽減につながる。しかし、mitoNEET発現のこのような低下は、酸化ストレスと耐糖能の上昇を引き起こす。したがって、mitoNEETの発現状態の変化によるミトコンドリア機能の操作は、細胞および全身の脂質恒常性の動態に著しい影響を及ぼす。

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