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生理:サルコリピンは哺乳類における筋による熱産生の新規に同定された調節因子である

Nature Medicine 18, 10 doi: 10.1038/nm.2897

非震え熱産生(NST)に骨格筋が果たす役割はよくわかっていない。今回我々は、筋小胞体/小胞体Ca2+ ATPアーゼ(Serca)ポンプの新規に同定された調節因子であるサルコリピン(Sln)が、筋による熱産生に必要であることを明らかにする。Sln−/−マウスは急激に寒冷曝露(4°C)されると、深部体温(37°C)が維持できなくなり、低体温症を発症した。褐色脂肪組織の外科的切除およびUcp1の機能ノックダウンによって、筋がNSTに果たす役割がはっきり示された。Slnヌルの遺伝的背景を持つマウスでのSln過剰発現によって、筋による熱発生が完全に回復したことから、SlnはSercaを介した熱発生の基礎をなすと考えられる。リアノジン受容体1(Ryr1)によって仲介されるCa2+の漏出が、Sercaによって活性化される熱産生に重要な機序であることがわかった。Slnは、Ca2+の存在下でもSercaとの相互作用を持続可能で、これがSercaポンプの脱共役を促進し、空転サイクルを引き起こすと考えられるデータが得られた。さらに、マウスではSln欠失が、食餌誘発性の肥満の素因となることが明らかになった。このことから、Slnを介するNSTは、代謝の過負荷の際に起用されると考えられる。まとめると今回の結果は、SLNが筋による熱産生と全身のエネルギー代謝における重要なメディエーターであることを示している。

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