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精神疾患:KCNH2の霊長類特異的な脳型アイソフォームは大脳皮質生理、認知、ニューロンの再分極と統合失調症のリスクに影響する

Nature Medicine 15, 5 doi: 10.1038/nm.1962

組織化されたニューロンの発火は大脳皮質の情報処理に必須であり、統合失調症ではこれが崩壊している。我々は、ヒト脳で5′相補的DNA末端の迅速増幅法を用いて、ニューロンの発火を調節するether-a-go-go-related K+チャネルの遺伝子KCNH2の霊長類特異的アイソフォーム(3.1)を同定した。KCNH2-3.1メッセンジャーRNAの発現量は、脳では完全長KCNH2(1A)の発現量に匹敵するが、心臓では3桁低くなっている。統合失調症患者の海馬でのKCNH2-3.1の発現は、KCNH2-1Aの2.5倍と高くなっている。5組の臨床データセット(367家系、1,158非血縁例、および1,704健常コントロールを含む)のメタ解析では、KCNH2の一塩基多型と統合失調症との間の関連が明らかになった。リスク関連対立遺伝子から、知能指数と認知処理速度の低下、記憶に関連した機能的磁気共鳴画像の信号の変化、および死後の海馬でみられたKCNH2-3.1 mRNA発現量の増加が予測できる。KCNH2-3.1はチャネルのゆっくりした脱活性化に重要なドメインをもたない。初代培養大脳皮質ニューロンでのKCNH2-3.1の過剰発現により、迅速に脱活性化するK+電流、および高頻度で非適合的な発火パターンが誘導される。以上の結果は、大脳皮質生理、認知および精神障害に関連するこれまで未知のKCNH2チャネルアイソフォームの存在を明らかにするもので、これは新たな治療薬標的となる可能性がある。

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