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免疫:Toll様受容体の不十分な刺激による抗体親和性成熟の欠如は呼吸器合胞体ウイルス疾患の悪化につながる

Nature Medicine 15, 1 doi: 10.1038/nm.1894

呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は乳幼児の入院の主要な原因である。以前、ホルマリンを使って不活化したRSVワクチンが小児の免疫に使われ、防御効果はなく、病原性をもつ抗体が誘導された。免疫された乳幼児は、その後のRSV感染に際してより重症度が高くなった。それ以来、どのようなRSVワクチンも認可されていない。このワクチンの失敗はホルマリンが防御効果のある抗原を破壊したためと広く考えられている。本論文では、防御効果欠落の原因はホルマリンによる抗原変性ではなく、感染防御エピトープに対する抗体のアビディティの低さであったことを示す。抗体親和性成熟の欠如はToll様受容体(TLR)刺激が不十分だったことの結果であった。本研究は不活化RSVワクチンが小児を感染から防御せず、結果として疾患の重症化を招き、42年間にわたってワクチン開発を妨げてきた理由を説明するものである。また、今回の結果は、不活化RSVワクチンは成分にTLRアゴニストを加えることにより安全で有効なものになる可能性を示唆しており、また親和性成熟が乳幼児の安全な免疫にとって重要な要素であることを明らかにしている。

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