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白血病:骨髄細胞の形質転換における染色体5qの欠失およびα-カテニンをコードする遺伝子(CTNNA1)のエピジェネティックな抑制

Nature Medicine 13, 1 doi: 10.1038/nm1512

5番染色体の長腕全体またはその一部の欠失(del(5q))は、ヒトの骨髄異形成症候群(MDS、前白血病)および急性骨髄性白血病(AML)にしばしば認められるクローン性染色体異常であり、これらの疾患の病因には染色体の欠損によって生じた1つ以上の癌抑制遺伝子の欠失が関与していると考えられている。主な共通欠失領域(CDR)は染色体バンド5q31.1に認められるが、このバンド内にある腫瘍抑制因子の同定は成功していない。我々は、5qに欠失があり白血病を発症させる原始細胞から得たRNAの遺伝子発現解析に重点を置き、CDR内に存在して正常な造血幹細胞で発現される12個の遺伝子について解析をおこなった。本論文では、5qに欠失のあるAMLまたはMDS患者から得た白血病を発症する幹細胞では、5qに欠失のないMDSまたはAML患者由来の幹細胞あるいは正常な造血幹細胞と比較して、α-カテニン(CTNNA1)をコードする遺伝子の発現が大きく低下していることを示す。5q31領域を欠失する骨髄性白血病細胞株HL-60細胞の解析では、保持されている対立遺伝子のCTNNA1プロモーターが、メチル化およびヒストン脱アセチルの双方によって抑制されていることが示された。HL-60細胞でCTNNA1の発現を回復させると、増殖低下およびアポトーシスによる細胞死が起こった。したがって、造血幹細胞におけるカテニン腫瘍抑制因子の発現喪失が、del(5q)を有するMDSまたはAML患者の細胞増殖を促進している可能性がある。

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