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癌と免疫:単一のマイナー組織適合抗原を標的とするT細胞は固形腫瘍を治癒できる

Nature Medicine 11, 11 doi: 10.1038/nm1311

マイナー組織適合(H)抗原に応答するT細胞は白血病の治癒にきわめて効果的であるが、固形腫瘍を根治できるかどうかについては知られていない。本論文では、免疫優性H7aマイナーH抗原に対してプライミングされたCD8+T細胞の注入により、マウスに定着したメラノーマを治癒できる可能性を報告する。腫瘍拒絶は、腫瘍部位でのインターフェロン(IFN)-γ産生H7a特異的T細胞が血管外遊走を起こしやすくなることで開始された。腫瘍内でのIFN-γ放出には、腫瘍血管新生の阻害と腫瘍細胞上の主要組織適合複合体(MHC)クラスI発現の増加という2つのきわめて重要な影響があった。H7aが広範囲に発現されているにもかかわらず、リンパ系以外の器官における少数のH7a特異的T細胞の播種では移植片対宿主病(GVHD)も白斑も引き起こされなかったが、これは宿主の非造血系細胞はMHCクラスI発現が低いことによって防護されるからである。我々の前臨床モデルは、ヒトの固形腫瘍の治療にマイナーH抗原にもとづいた免疫療法をどのように使えるかについてユニークな手がかりを与えるものである。

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