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痙攣発作:NKCC1輸送体は成長中の脳における痙攣発作を促進する
Nature Medicine 11, 11 doi: 10.1038/nm1301
発生期におけるClー透過性GABAA受容体(GABAA-R)の活性化は、高い細胞内Clー濃度、および脱分極側にシフトしたClーの平衡電位(ECl)をもたらし、その結果ニューロンを興奮させる。その後、ニューロンのClー外向き輸送活性が尾側から吻側へと高まっていくにつれ、GABAは抑制的作用を示すようになっていく。このような尾側から吻側へと至るClー排出輸送活性の発達パターンに合致し、新生児痙攣における運動系の発作はGABA作動性の抗痙攣薬によって抑制されるが、皮質性の発作は抑制されない。Na+-K+-2Clー共輸送体(NKCC1)は、ニューロンの細胞内Clー蓄積を促進する。NKCC1の阻害薬であるブメタニドは、未成熟ニューロンのEClを過分極側にシフトし、in vitro海馬スライスのてんかん様活動を抑制し、in vivoで記録された新生ラットのてんかん様電気活動を減弱した。ブメタニドの作用は、GABAA-R遮断薬であるビククリンの存在下、あるいは、NKCC1ノックアウトマウスの脳スライスにおいては観察されなかった。ヒトおよびラットの皮質でのNKCC1とClー排出性輸送体(KCC2)の発現レベルを検討したところ、周産期のヒト皮質におけるClーの輸送様式は、ラットと同様に未成熟であることがわかった。これらの結果は、NKCC1が発生期脳において痙攣発作を促進することの証拠であり、さらに、ブメタニドが新生児痙攣発作の治療に有用である可能性を示している。