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コムギ:ゲノム情報に基づくプレブリーディングにより、ジーンバンクに蓄えられている多様性をコムギの品種改良に活用する

Nature Genetics 54, 10 doi: 10.1038/s41588-022-01189-7

過去に形成された多様性をジーンバンクで維持することには、多大な努力が払われてきたが、それは、将来の作物品種改良における植物遺伝資源(PGR)としての役割が期待されているからである。しかしその趣旨は、実際の品種改良には期待されたほどは活用されていない。本研究では、コムギの品種改良に役立てるため、これまで栽培品種に取り入れられていなかった遺伝資源を除外することなく、ゲノム情報に基づくプレブリーディング戦略を実施した。膨大な冬小麦コレクションの高密度の遺伝子プロファイルを収集して分析し、一定の基準に沿って選択したコアセットについて穀物収量と黄さび病(YR)に対する耐病性を評価した。品種改良においては既に野生種からの遺伝子導入により好結果が得られているが、PGRには未利用の有用な多様性が残されている。まだ品種改良に用いられていない、耐病性を付与するドナー(遺伝子提供系統)候補株を選抜する一方で、エリート品種とPGRとを交配して得られたF1の形質から、プレブリーディングに用いられるPGRの収量への寄与を推定した。ジーンバンク内および複数のジーンバンクを横断的に参照して得られるゲノム予測により、エリート栽培品種との交配種として使用するのに最も適した親植物を選び出し、その優良な子孫植物が現在栽培されているコムギ品種を上回ることを複数の栽培試験で確認した。

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