Analysis

選択的スプライシング:哺乳類の器官発生過程における選択的スプライシング

Nature Genetics 53, 6 doi: 10.1038/s41588-021-00851-w

選択的スプライシング(AS)は哺乳類のゲノムで広く起きているが、種を超えた比較が行われているのは成体組織での研究にほぼ限定されており、ほとんどのASイベントの機能的な役割は明らかになっていない。今回我々は、哺乳類6種および鳥類1種の7つの器官について、出生前と出生後にわたり、発生過程で起きているASのパターンを評価した。その結果、発生の過程でASイベントの頻度が特に最も大きく変化する(動的である)のは脳においてであり、動的でないASイベントと比較すると、これらのイベントは種を超えてよく保存されていることが分かった。発生の過程で組み込みの頻度が増加していくカセットエキソンは、保存され制御されているASのシグナルを最も強く示す。進化の過程で新たに出現したカセットエキソンは、主に精巣発生の後期に組み込まれるが、それとは対照的に、保存されているエキソンの大部分は脳に特異的であった。本研究の結果から、遺伝子の発現レベルを制御するプログラムとASを制御するプログラムの間の複雑な相互作用が、器官(特に脳と心臓)の発生において重要な役割を果たしていることが示唆される。ASは、そのような制御ネットワークの下で、幅広く発現している遺伝子から組織特異的あるいは時期特異的なアイソフォームを生み出すことにより、遺伝子の機能に多様性を付与している。

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