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パイナップル:フイリパイナップルゲノムと栄養繁殖作物の栽培

Nature Genetics 51, 10 doi: 10.1038/s41588-019-0506-8

南アメリカ大陸原産のパイナップルなど、栄養繁殖作物の栽培化は「単一の過程」で起こったと考えられている。我々はフイリパイナップルAnanas comosus var. bracteatus CB5系統種のゲノムを配列解読し、得られた513メガ塩基対の配列から2万9412個の遺伝子を持つ25本の染色体を組み立てた。フイリパイナップルCB5系統種とパイナップル栽培品種F153およびMD2のゲノムを比較することにより、繊維生産、色生成、糖蓄積、果実の熟成についてのゲノム的基盤が明らかになった。さらに我々は、アナナス属89種のゲノムの配列再決定を行った。栽培品種「スムース・カイエン」や「クイーン」には古代および最近の栽培化に伴うゲノムの混合の痕跡が見られたが、「シンガポール・スパニッシュ」については栽培化が一段階で行われたことがうかがわれた。また、25の選択的一掃を検出し、その中には、タンデム重複した2個のブロメライン阻害因子の強い選択的一掃も含まれていた。自家不和合性をもたらすと考えられる4個の候補遺伝子はF153では連鎖していたが、自家和合性のCB5では機能しない状態になっていた。今回の発見により、栄養繁殖作物の栽培化においては有性生殖(交配)を伴う過程による栽培化と単一の過程による栽培化が混在していることが裏付けられた。本研究の手法は、他の栄養繁殖作物についても、栽培化が有性生殖、無性生殖のいずれの過程を経て行われたかの軌跡をたどるのに役立つだろう。

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