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結核菌:平滑型(smooth型)結核菌のゲノム解析からヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の祖先菌とヒトへの適応を理解する手がかりが得られる

Nature Genetics 45, 2 doi: 10.1038/ng.2517

ヒトの結核の病原菌であるヒト型結核菌( M. tuberculosis)は、世界的に感染が拡大しているが、遺伝的多様性は限られているという特徴を持つ。対照的に、マイコバクテリウム・カネッティ(Mycobacterium canettii)とその近縁の結核菌群も、ヒトに結核を引き起こすが、珍しい平滑型(smooth型)のコロニー形態を示し、その分布は東アフリカに限局されている。本論文では、サンガー法(カバー率4〜5倍)、454/ロシュ(カバー率13〜18倍)、イルミナDNAシーケンサー(カバー率45〜105倍)を用いて、平滑型結核菌(STB)の代表的な5株の全ゲノム塩基配列決定およびその解析を行った。我々は、STB分離株は、ヒト型結核菌よりも、ゲノムサイズがより大きく、遺伝的な変異率がより高く、分子痕跡がより少なく、異なるCRISPR-Cas系を持つことに加え、非常に組み換えを起こしやすく、進化上早期に分岐していることを示す。これらの相違にもかかわらず、結核を引き起こすマイコバクテリアはすべて、高度に保存されたコアゲノムを共有している。マウスの感染実験で、STB株はヒト型結核菌より持続性や病原性が低いことが示された。我々は、ヒト型結核菌は、マイコバクテリアの祖先型STB様プールから、持続機構や病原性機構を獲得することで出現したと結論する。また、我々はこれに関与する分子事象についての知見も示す。

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