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X染色体から常染色体へのレトロ転位遺伝子はマウスの精子形成に必須である

Nature Genetics 36, 8 doi: 10.1038/ng1390

我々は、マウス1番染色体にマップされる、劣性の精子形成異常である若年性精原細胞枯渇変異(jsd)をもつ遺伝子を同定した。jsdを272kbの領域に絞り込み、この領域を再度配列決定した結果、原因となった変異を特定することができた。それは、ゲノム上の2.3kbにわたるオープンリーディングフレームによって予測されたタンパク質産物を、致命的に分断するフレームシフトであった。明らかにこの遺伝子Utp14bは、X連鎖性の遺伝子が、mRNAの逆転写を経て、そのcDNAを、ある常染色体遺伝子のイントロンに挿入させたものである。その常染色体遺伝子は、Utp14bとプロモーターおよび5’非翻訳領域エキソンを共有する。我々の知る限り、Utp14bは、哺乳類の劣性変異表現型と結びついた最初の、タンパク質をコードするレトロ転位遺伝子である。X染色体上にあるUtp14bの親遺伝子は、rRNA前駆体のプロセシング、ひいてはリボソームの組み立てに必須なタンパク質をコードする酵母Utp14の哺乳類におけるオーソログである。雄における減数分裂時のX染色体不活性化を埋め合わせるために、X連鎖性のハウスキーピング遺伝子から進化した常染色体上のレトロ転位遺伝子によって、哺乳類の精子形成が支えられているという仮説を、我々の発見は裏づけるものである。我々は、Utp14b様のレトロ遺伝子が、少なくとも4種の哺乳類の系統で独立に生じ、進化的に保存されてきたという知見を得ている。これはおそらく、雄の減数分裂細胞でリボソームの組み立てを可能とするための強い選択圧があったことを示唆している。

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