2026年8月号Volume 23 Number 8
空気中DNAが語る生態系の姿
空気中を漂う遺伝物質から、生態系全体を迅速に評価したり、侵略的外来種を検出したり、さらには個人を識別したりすることさえ可能になっている。一方、検出結果の解釈や、ヒトの遺伝情報を巡る倫理的課題も浮上している。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「DNAワクチンが脳腫瘍治療にもたらす希望」「密猟されたセンザンコウの産地をDNAで特定」「頭部への軽度の衝撃でも腸内マイクロバイオームに乱れ」「南極の氷に閉じ込められた太陽系の旅路の手掛かり」、他。
News in Japan
News in Focus
ミトコンドリアは新たな「細胞小器官」を生み出せる
この発見は、古代のミトコンドリアが外膜の一部を切り離すことで、細胞内に全く新しい特殊化した「膜小胞」を形成したという説を裏付け、現在の細胞がどのように進化したかに関する手掛かりをもたらす。
白亜紀の海洋の支配者は「クラーケン」のようなタコだった?
この絶滅頭足類の体長は最大で19 mにもなり、食物連鎖の上位にいた可能性がある。
ウシの胃の微生物でメタン産生に関わる新たな細胞小器官を発見
今回の発見は、草食家畜のメタン排出量を削減する方法の探索に役立つ可能性がある。
心臓の拍動ががんを防ぐ
マウスを使った実験で、心臓が血液を送り出す際に心臓にかかる圧力が、がん細胞の増殖を抑制していることが示された。
マウスモデルは遺伝的背景に注意
報告されているマウス系統の名称は、その遺伝的構成と一致していない場合が多いことが示された。
ペーパーミルの広告データベースから明らかになった研究不正の実態
世界のペーパーミルの広告を2万件近く分析した結果は、学術誌が研究不正を取り締まるのに役立つ可能性がある。
トランプ政権がNSFの科学諮問委員を全員解任
1950年に設立された全米科学委員会の委員全員が解任されたが、その理由の説明はなかった。
arXivが、幻覚引用が認められた著者の投稿を停止
プレプリントサーバーarXivが、AIによる粗悪コンテンツに加担する著者に厳罰を科す方針を発表した。
COVID-19研究者への訴追が進む中、NIHがNIAIDの複数の幹部を更迭
ドナルド・トランプ大統領の就任以降、NIH国立アレルギー・感染症研究所では、最高幹部10ポストのうち8つで幹部が職を追われた。
若手研究者はベテランより「破壊的」な科学を生みやすい
数百万人規模の科学者の論文を分析した結果、年長の研究者ほどキャリア初期に接したアイデアにとらわれやすいことが示された。
Features
空気中に漂うDNAが生態系の謎を解き明かす
空気中を漂う遺伝物質から、生態系全体を迅速に評価したり、侵略的外来種を検出したり、さらには個人を識別したりすることさえ可能になっている。
性染色体と疾患を巡る常識を見直す
長らくその重要性が過小評価されてきたX染色体とY染色体が、健康や疾患感受性に見られる性差に関する我々の理解を大きく変えつつある。
科学のためのバイブコーディング
AIツールを活用すれば作業をスピードアップできるかもしれないが、そのリスクに見合う価値はあるのだろうか?
試される記憶:目撃者の確信と正確さ
他人の誤った記憶によって、無実の人が罪に問われるケースは少なくない。この問題に対して、最新の科学が意外な解決策を提起している。
現代人の注意持続時間は本当に短くなっているのか?
私たちはあの手この手で気を散らせようとするデジタルの誘惑に悩まされているが、基礎的な「注意を向ける能力」自体は衰えてはいないようだ。
News & Views
初代星で作られた元素を含む宇宙初期の銀河を観測
ビッグバンから間もない時期に捉えられた、極めて暗い銀河の観測から、この銀河に第一世代の恒星由来の物質が存在していることが分かった。
クリックケミストリーの25年
2つの分子を効率良く結合させる「クリック」ケミストリーの概念が最初に報告された時、一部の化学者はその有用性に懐疑的だった。しかしその後、この画期的な反応は多くの研究分野を一変させることになる。
人間の協力は崩壊と修復を絶えず繰り返している
現実世界のデータから、人間の協力は絶えず低下と回復を繰り返すことが明らかになった。従って、協力への動機は自然に持続すると見なすのではなく、能動的に更新し続ける必要がある。
Advances
シカの道を照らす光
夜明けや夕暮れ時の森で、シカには光る標識が見えているのかもしれない。
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